これで最後

これで最後
良い子がお家に帰る時間を知らせるチャイムが町中に響く。 タイムリミットはもうそこまで迫っている。 学校から彼女の家の前まで、心の準備期間はわずか15分。 周りには部活帰りだと思われる同じ学校の生徒たち、そこに少しだけ犬を連れて歩く人が交ざっている。 「あの犬かわいいね」なんて呑気に言う彼女に空返事をしながら僕は頭の中で何度も同じセリフを唱える。 彼女に伝えようと決めた日から何度も言えずに飲み込んできた言葉は徐々に形を変えていき、ようやく納得できるものになった。 昨日も一昨日もあと少しのところで出てこなかった言葉が、今日はすんなりと出てきてくれるような気がした。 君と友達としてこの道を歩くのはこれで最後だ。 次の角を曲がれば彼女の家が見えてくる。 彼女に褒められた犬は尻尾を大きく揺らして楽しそうに歩いていった。
狛狐
狛狐
文章書く習慣つけれるように頑張ります。