10min

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「先生、今日もお見舞いありがとう。」 そう言って病室で微笑む彼女は本来なら同じ教室にいるはずだった僕の教え子だ。 「先生、今日は何を教えてくれるの?」 「今日はね…」 最近はいつもちょっとした授業をしていた。というのも数ヶ月前、彼女から「いつでも学校に戻ってみんなと授業を受けられるように少しずつでいいから勉強を教えて」と頼まれて、それを承諾した結果だ。 「……今日はこの辺で終わりにしておこう。続きはまた今度ね。」 彼女にそう告げると、 「はい、先生さようなら。」 とにっこりしながら軽くお辞儀をした。その様子を確認して僕は病室を後にする。この流れだっていつも通りのことだ。
千莵
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