海月の骨

海月の骨
第三章 波の間で 夏休みが始まり、私たちは毎日一緒に過ごした。海辺でスケッチをしたり、アイスを食べながら他愛もない話をしたり。瑠璃の笑顔は、まるで夏そのものだった。でも、彼女の瞳の奥には、いつも何か隠れている気がした。 ある夜、町で花火大会があった。私たちは浴衣を着た。瑠璃の浴衣は黒地に白い椿の花が咲いていてその上を朱色の金魚が泳いでいるのが優雅でとても彼女に合っていた。それに比べ私は母が幼い頃に着ていたお古で、少し古くさく感じてしまう柄だった。海岸で花火を見た。夜空に広がる火の花が、海に映って揺れる。瑠璃の横顔が、花火の光で照らされていた。 「凪夜、好きだよ」 突然の言葉に、私は息を呑んだ。彼女の手が私の手を握る。冷たくて、でも温かいその感触に、心臓が跳ねた。
くろねこ
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主に百合小説を書きます 甘酸っぱいひと時の青春