最期を願う祈りと知略
梯子を下りていく途中、ダルタンは人々の息遣いや寝息を聞き取る。
ここはかつて大勢の労働者が宿舎として使っていた空間だ。広く大きく複雑で、息を潜めるのに適している。
鋼鉄の廊下に足を付いて間もなく、隻眼の少女が三人を出迎えた。彼女は紫色のボブヘアーを掻き分けて、噤んだ口の代わりに視線を泳がせる。ダルタンに向けて、そいつは誰だと言いたげだった。
意図を汲み取ったガルダは、少女の頭を撫でながら簡単な説明をする。
「アルナ、お迎えご苦労。米国特殊部隊に襲われていたところを保護したんだ……君と一緒だ」
アルナと呼ばれた少女は、眉根を潜めて感情の機微を表す。
ダルタンは二人のやり取りを聞いて、酷くいたたまれない気持ちになった。アルナとダルタンは互いの哀しい瞳を見やって、そっと目線を逸らし合う。
「マイルズ。他の同志は到着したか?」
ガルダの問いに、マイルズは表情を曇らせた。
「軍曹の部隊と、私が率いていた部隊で全てです。他の合流地点とは連絡が付かず、通信も途絶えています」
0
閲覧数: 6
文字数: 2778
カテゴリー: SF
投稿日時: 2022/1/28 12:53
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
アバディーン・アンガス@創作アカ
ローファンタジーや一風変わった雰囲気の作品が大好物。
主にダークファンタジーとかサイバーパンクとか、好きな要素をごった煮した作品を鋭意執筆中です。
「好きじゃないけど面白い」と言われる作品を目指しています。
合間に書いた短編を気ままに投稿していく予定です。