【第九回N-1】  警報

通知   from:気象庁 大雨警報(土砂災害):◼︎◼︎市⚪︎⚪︎町付近では、過去数年間で           最も土砂災害の危険性が高まっています。           特に⚪︎⚪︎町では台風第8号のとき以来で           最も土砂災害の発生するおそれが           高くなっています 携帯電話を鳴らしたその通知は突然で、何より奇妙だった。今、たしかに雨は降っているがそれは傘を差す必要がないほどの強さで、せいぜい水たまりを作るくらいであったし、私のいる場所が山と隣り合わせだからといって、今までその山では土砂崩れやら何やらは起こったことがなかった。  私はこれが何かの間違いだとしか思うことができなかった。そういえば、山の向こう側にある別の市は、ここより激しい雨が降ると天気予報のキャスターが言っていたのも思い出した。しかし、⚪︎⚪︎町は今まさに私がいるところで、自宅のある場所でもあった。私は画面に映る“警報”の二文字に何だか不安になって、いっそう家へ帰りたい気持ちを募らせた。  横を見た。時刻表によると、次のバスは二十分後であった。私は先ほど行ってしまったのに乗りそびれて、五分ほど前から待合所の屋根の下のベンチで次のバスを待っているのであった。バスは行ったばかりであったし、元々人のいる地域ではないから車通りも疎らで、辺りには誰も見えなかった。遠くに見える寂れた商店はシャッターを閉め切っていて、屋根の低い民家も、中に人がいるのかいないのか灯りが消えて何物の気配も感じさせない。雨は相変わらず、目の前の水たまりに弱々しい波紋を広げていた。
後川
後川
遅筆です。フォローしてくださる方 本当にありがとうございます。 第七回N−1 12位  435点 第八回N-1 9位  318点 第九回N-1 8位  489点