忘れてください

「ただいま〜」  我が家へ帰ると、君はキッチンから、いつものおかえりと声をかけた。  ガサガサと花束を渡すと、嬉しそうに匂いを嗅いだ。 「ありがと〜!」にっこり微笑む君の笑顔に僕のささくれた心が綻んだ。 「きれいだよね」 「今日のご飯なに?」 「ジャガイモと豚肉と玉葱を煮たやつだよ」彼女はそう言って「肉じゃがだね」て、僕が言うと、笑った。 「もう、できる?」彼女は、まだ、笑ったまま頷いた。 「手、洗ったらご飯よそうね」
英兎