ユニバーサル

ユニバーサル
「スマホやめてください。危ないです」 自転車で私たちを追い越した警察官が、歩きながらスマホを操作していたおじいさんに注意をする。おじいさんはあっと口から空気をこぼした後、スマホをもんぺのポケットの中にしまった。警察官はそれを目で確認した後、またペダルを漕ぎ出した。彼の背中に張り付いている「POLICE 警視庁」という文字がどんどん小さくなっていく。 「歩きスマホしてる奴ってムカつくよな」 隣りを歩く遠馬が言った。 私はさっきのおじいさんの方を見た。おじいさんはヨタヨタと私たちとは逆の方向へ歩みを進めていた。 「一瞬チラッと画面見るとかなら分かるけど、平気で下向いたまま突進してくる奴とかいるからな。それでぶつかると舌打ち。どうかしてるよ、まじで」 ぶつかるのはあなたも前を見ていないからなのではないかと私は思ったが、それは言わなかった。 「まじでこの世には他人のことを考えずに生きてる奴が多すぎる。みんな自分のことしか見えてない」 クリスマスが過ぎ、役目を終えたイルミネーションが商店街の天井から吊るされている。おそらく年明けまで吊るされているだろう。クリスマスの時は赤や緑に光っていたが、正月は何色に光っていたっけ。幼い頃からこの道を遠馬と何度も通っている。それなのになぜか思い出せないのは、きっと正月とは全く関係の無い色だったからに違いないと私は思った。 遠馬はこの商店街の丁度真ん中辺りにある靴屋の息子だった。そして私はその隣の時計屋の娘だった。歳が同じだから、幼い頃は相当仲が良かった。お互いの家を毎日行き来して、一緒に寝たり一緒にお風呂に入ったこともあった。中学に入るとなんとなく疎遠になった。私は少し寂しかったが、思春期というのはそういうものだと知っていた。
あ