深夜、内緒話に甘いモンブランを添えて

 終電の時間をとっくに過ぎた新宿駅。  いつまでも騒がしい夜の深淵で彼女を見つけたのは偶然だった。  若さという鱗粉を振り撒いていたあの頃とは違う。  良くも悪くも彼女らしい等身大の姿で、くたびれたローヒールを頼りなく鳴らしていた。 「委員長……?」  口から溢れた懐かしい響きは、意図せず彼女の耳にも届いたらしい。  生真面目な銀縁眼鏡のレンズ越しに、彼女は大きく目を見開いた。  目元のクマや少しやつれた顔の輪郭が彼女の疲労を色濃くしている。
木のうろ野すゞめ
木のうろ野すゞめ
雰囲気小説を書く人です。 毎週金〜日曜日の間になにかしら書きあげていきたいです。 現在は主に「書く」「書く習慣」にて生息しております。 2025/8/16〜 ※無断転載、AI学習禁止