杞憂

杞憂
 嗚呼、どうしよう。嗚呼、嗚呼、嗚呼! 私はどうすれば良い! 何を喋れば良い! 口の開き方は? 手の動きは? 返答の仕方は? 尊敬している方に会うのだ。粗相は許されない。正しい私であらねば! 正しい私。そうなる為には矢張り当日の立ち回りを……。  いや、その前に、準備をせねばならない。持っていくものは何だったか。そう、小説だ。私なんかが書いた小説を、我が尊敬する小説家は読んでくれるのだろうか。持ち込みを許可されたとて、受け取ってくれるのだろうか!  私は首を振った!  そんなことを考えても仕方ないのだ。私はただ己の本を渡す。ただそれだけだ。  大丈夫。きっと大丈夫。なぜなら私はこんなにも悩んでいるのだから。計画を立てているのだから、不測の事態に怯えることはない。  筈だったのに!
月影羽
月影羽
作家志望の学生 好きな作家は芥川龍之介、太宰治、フョードル・D、東真直、夜咄頼麦etc. アイコン→みわしいば様