夫、乗り換えキャンペーン
「真緒、早く!陸斗に追いつけなくなる!」
葉っぱは赤や黄に色付いて、吹く風は段々と寒さを帯びていく。ベビーカーを押す夫と、その先を走る五歳の陸斗の背中に向かって、出せるだけの全力で足を運ぶ。
「あれ!次はあれ乗ろ!」
小さな身体で指を指したのは、大きな大きな観覧車。これで今日は何個目のアトラクションだろう。後ろを振り返りもしない陸斗は、きっと純粋な眼差しで観覧車を見上げている。
「待て待て陸斗、真緒がまだ息切らしてるから」
陸斗の頭を二回。撫でるように優しく手を乗せて、声を掛ける。そして陸斗がどこかへ走って行ってしまわないように手を掴んで、ベビーカーに座る一歳の隼斗の様子を確認して、次は私に飲み物を手渡してくれる。
「ありがとう。もう大丈夫。よし、観覧車乗ろっか!」
ベビーカーを預けて、家族四人。恐る恐る観覧車に足を踏み入れると、それは空気を受け少し揺れながらゆっくりと空高くに昇っていく。長男の陸斗は外の景色を見ながら我が家を探している。
「陸斗、家はどこか見つかった?」
「まだ!あっちの方だよね」
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カテゴリー: ホラー
投稿日時: 2024/9/16 17:24
宮浦 透 Miyaura Toru
みやうらとおるです。小説書いてます。興味を持ってくれた方はアルファポリスや公式LINEにて他の作品も見れます。