わかってないよ。(前編)

わかってないよ。(前編)
 君と出会ったのは、僕がまだ恋を信じていなかった頃。まだ高校生だった僕は、友人の恋話にうんざりしていた。  あの子の目が可愛い。あの子の髪の長さが好き。僕は正直そんなのどうでも良かった。  友人に初恋はいつなのかと聞かれ、とっさに「中1だよ。」と答えたが、実際にはまだ初恋なんてしたことがなかった。矢継ぎ早に質問してくる友人から逃げたくて、教室を抜け出した。  辿り着いたのは、屋上に続く階段の踊り場。ここは学校で唯一と言っていいほど静かで、僕はここでいつも読書をする。  階段に座り、本を開けようとした所だった。  屋上からガタン!と大きな音を立てて、人が出てきた。そのまま転がり落ちるように階段を降りて行った。  どうしたんだろうと思ったが、知らない女の子の事なんてどうでも良かったし、面倒と思った。  本当に自分でもどうかしてると思う。その女の子を追いかけたなんて。そして、「落としたよ。」なんて嘘までついて自分のハンカチを渡したなんて。  仕方なかったんだ、女の子の涙なんて見た事なかったんだ。
ぽんこ
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