第四章 ~古の魔人~ 2

第四章 ~古の魔人~ 2
 外から眺めて思っていたよりも内部はかなり広かった。  電気系統は墜落の衝撃で破損しているようで、備え付けられた非常灯の頼りない明かりに照らされた薄暗く長い通路がずっと続いている。  歩を進める自分たちの靴音が、高く、長く響き渡り、遠く消えていく。  船内はひっそりと静まり返り、人影が見えないのは当然のこと、僅かな電灯の振動音のほか物音はもまるで聞こえない。  船内にもやはり巡視員はおらず、無人であることが明確に窺える。であれば、調査は何の障害もなく順調に進むはずであった。  しかし、足を踏み入れた瞬間から、誰も、何も言葉を発する者はいなかった。  セルフィーだけでなく、きっとほか四人各々も鋭く感じ取っているようだ。  船内に蟠る、得も言われぬような強烈な違和感に。  誰もいないはずなのに、ずっと何者かの気配を感じる。まるですぐ近くから、全身を隅々まで眺め回されているかのような不快感がずっと尾を引き、始終纏わり付いている。その正体が一体何なのかはセルフィーには分からなかったが、無人の船内は外とは全く別の異質な世界のような気がして、惨劇が起きた谷底よりもずっと気味が悪かった。  アイ・センサーを搭載したラグナとリィーガーを先頭に五人は探索を続ける。二人のセンサーであれば、暗闇に阻害されることなく、周囲に存在する物体の形状を認識して進むことが出来る。非常灯の儚い明かりを頼りに探索するより、よっぽど信頼が出来た。
ユー