人を殺しました。
これは現実の出来事なんだろうか。目の前で微動だにせず横たわるクラスメイト、三村のからだを見てそう思った。こんなに呆気なく、人って死んでしまうものなんだろうか。まるで夢でも見ているかのように、頭がぼうっとしていた。
目を瞑る。再び目を開ければ、いつもの日常、自分の部屋の天井にきっとなっていると信じて。
目を開ける。そこには月に照らされた川面と、人通りの無い鉄橋、虫の鳴く草むら・・・そして横たわる死体。
それが現実だと認識した瞬間、俺の頭に浮かんだのは、「やばい。バレたら捕まる」だった。途端に全身から冷や汗が吹き出す。顔が火照っているのに、頭から血の気が引いていく。心臓が痛いほど鳴り響く。震える手で、死体を橋の下の物陰に隠し、血がべったりとついた鉄パイプを握りしめ、全力疾走でその場から逃げた。「捕まる、捕まる。」頭の中はそれでいっぱいだった。走って逃げる途中、若いカップルに不審な目で見られていた気がしたが、そんなこと気にしてはいられなかった。
家までの道の途中にある森の中に鉄パイプを捨て、必死で家に帰った。
「お帰り。遅かったね。」家に入ると、母の声が聞こえた。俺はへたへたと椅子に座り込んだ。シチューのいい匂いがする。「そんなに疲れるまで何してたのよ。汗びっしょりだし・・・お風呂入って着替えな。」そう言われ、俺は自分の服を見た。外の暗闇では気づかなかったが、血が点々と付いていた。俺は母に気づかれないようにそっと椅子を立ち、洗面台でその血を洗い流した。
夕食を済ませても、心臓は鳴り止まなかった。頭も痛い。居間でテレビを見る家族を尻目に、俺は部屋に戻ろうとした。
プルルルル・・・突然鳴った電話の音に、心臓が止まりそうになる。まさかバレたのか。いや早過ぎる。それにどうやってバレるんだ・・・お願いします、どうかバレていませんように・・・!母が電話に出る。受話器を取る母の顔が曇る。「はい、はい・・・」少しして、母が電話を置いた。「なんの電話だった?」俺が聞くと、母は「化粧品のモニターだって。前も断ったんだけど、また掛かってきたのよ。」と、不機嫌そうに言った。全身の力が抜け、束の間安堵した。しかし、いずれにせよ三村がいなくなったことはすぐに分かる。そうなった時に、しらを切り通せるかどうかだ。俺はそう思った。
その後は何事もなく、俺は部屋に戻り、ネットを見ていた。「人 殺した 罪」「殺人 バレる 確率」など、虱潰しに調べまくった。しかし、いくら調べても、というか調べれば調べるほど、不安は募るばかりだった。そんな中、とあるサイトの一文に凍りついた。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2022/9/19 15:27
こころ虎