作品1

桜が散ることほどさみしいものはないと思う。 僕はいつもそう思う。体の奥底からじんわりと暖かくなるような陽の光や、あの独特な雰囲気 をかもしだす空気感とか、それらがずっと自分のそばにあって欲しい、どこかに消えていって欲し くないと思ってしまうことがある。 何というか、卒業式の終わったあとの雰囲気や気持ちを、ずっと自分の記憶や写真みたいな曖 昧なものなどでなく、何かもっと明瞭な、心の目でいつでも見える形にずっと残しておきたいと 思うようなものだと思う。 しかしどれだけ願っても、桜というのはいつも散っていくし、時間は無常に進んでゆくのだ。 それに気がついたのはいつからだったろうか、よく覚えていない。春の季節になるとその実感が 湧いて、たまに感傷に浸ってしまい、泣きそうになってしまう。