終戦記念日に

なんということであろう。ここ数年間は、この日に黙祷するのを忘れ果ててしまっている。日本人としていかがなものかと思うが、それだけ昭和は、戦争の記憶は遠くなりにけり、ということなのか。 父が健在であれば今年83歳。当時の事をもっと尋ねておけば良かったとも思うが。 「戦争が起きたこと、それは仕方のなかったことだ」 ある時つぶやくように語ったきりで沈黙してしまった。父にとっては、あの頃のことを振り返るのは疼痛のような思い出したくもない痛みを再現するようなものだったのかもしれない。 どこまで本気かわかりかねたが、シンパとして日本共産党を支持し続けたのは、遠い厄介な記憶への一種の復讐だったのではないか。この政党のいかがわしさが年を追う毎に明らかになっても、頑なに日本共産党支持を訴えていたのはある種の意地だったのだろう。
江戸嚴求(ごんぐ)
江戸嚴求(ごんぐ)
ノベルアップ+でエッセイなど発表している、五十路の雑文家です。江戸厳愚から江戸嚴求と改名しました。