140文字小説+α その107 「逃亡」

「1グラム、1万円から。今、売れるのは4.5グラムまで。買う?」  繫華街の裏路地で、怪しい男に声をかけられた。  どうにかして逃げないと。  考えろ、考えるんだ。 「……同じくらいのドジョウを釣ったことがあります」  男が、首を傾げてる内に逃げた。  人通りの多い道に出た。そっと胸をなでおろす。  今更だけど、何だったんだ、あの逃げ方。自分でも、まったくもって意味が分からない。  私、釣りしたことないし。グラム1万円のドジョウってなんだ。
きと
きと
就労移行支援を経て、4度目の労働に従事するおじさんです。 あまり投稿は多くないかも知れませんが、よろしくお願いします。 カクヨム、エブリスタでも小説を投稿しています。