骸ノ夢

骸ノ夢
 暗闇の中で僕は1人、じっとしている。自分が呼吸をしているかすらわからない。どれくらいの時間が経ったのか、僕は重い体を起こす。僕は寝られない時間ほど苦しいものを知らない。こういう夜は体を起こして諦める方が楽だ。目を瞑っていても、頭の中がぐるぐるして気分が悪くなる。ベッドの上にあぐらをかき、そのまま目線をゆっくり上へ移す。時計が2時8分を指しているのだから、きっと今は2時8分なんだろうなあ。視界がチカチカ、ふわふわしてて頭が痛い。  自分の身体に目をやる。少し長めの袖のトレーナーに、スウェットパンツというやる気のないスタイル。上下ともに灰色だ。まあ今は夜だからみんなそんなものか。あ、風呂に入り忘れたな。昨日は満員電車に乗ったのにな。満員電車に我先にと乗る人はきっと、他の人間を無機物か何かだと思っていると思う。自分が何かの約束に遅れないことだけを考え、他の人を押し込んで踏みつける…もちろん、これは比喩的な言い方だが、僕が慣れてないのもあって、まあそんな感じがするのだ。ああ本当に汚ったないなあ。    思考を止める。いや、思考が止まる。  時間の過ぎていく感覚がして、なんだろう、いや、なにもない。  寒い夜だ。外に雪がちらついている。  足の裏が冷たい床につく感覚をゆっくり味わって、それから一気に足に体重を乗せる。立つことに慣れない足が軽く震え、少し浮いているような感覚になる。こういう感覚が好きだ。  それから散らかった部屋をゆっくり一周する。足が何かに当たって、「これはなんだろう、ああ、多分夏に散々お世話になったあの小さな青い扇風機か」と考える。そして、青い扇風機との浅い浅い思い出を振り返っていく。こういう意味のない時間が好きだ。
骸ノ詩
骸ノ詩
皆さんこんばんは、骸ノ詩です。 暗い系が多いですが、寄り添えるようなお話を目指しています。 どうか皆さんの心に小さな灯りを灯せますように。 ちなみにコメントに喜びます(笑)