迷いの森-1

迷いの森-1
 風が吹けば波紋の様に拡がる木々の騒めき。それは止まる術を知らないようで、光が届かない程、木で覆われた暗闇の中で佇む僕に不安を煽る。 帰りたい。何度もそう思った。 今、僕が立っているこの地は【迷いの森】と呼ばれており、立ち寄った者は誰一人として帰っては来なかった。 それでも人々は、この地へと向かう。なぜなら誰もが欲しがる物がそこにはあるのだ。 震える足を一歩二歩と差し出す。大丈夫だ、と自分に言い聞かせながら深く地を踏む。 幾分かすると、ぽつんと建った小さな家に辿り着いた。まるで絵本の世界から飛び出してきたかのようなログハウスの扉が、ぎこちない音をたてながら開く。こちらを覗き込むように顔を出したのは、花のような少女だった。 少女は長い黄金色の髪を靡かせながら、こちらにゆっくりと近づいて来る。小さな体が僕の前に立ちはだかるやいなや、胸ぐらを掴まれぐっと引き寄せられた。
風蓮華
風蓮華
アルファポリス、なろう、pixiv等でも書いてます。 うちの子大好きマンです、気をつけて下さい、喋らせるとうるさいです。