夜が明ければ
夏の終わりの夜、校舎の屋上には風が吹いていた。
文化祭の準備を抜け出して、僕らは並んで夜景を見下ろしていた。
「なあ、卒業してもさ、こうして集まれるかな」
りとが笑いながら言った。
「無理だろ。お前はバンドで東京行くし」
「お前は美大だっけ?遠いな」
笑い声が少し悲しい夜空に溶けていく。
屋上から見える街の灯りは、まるで手が届きそうで届かない星のようだった。
あの夜、僕らは未来に怯えながらも、まだ何にでもなれる気がしていた。
――あれから十年。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/11/3 5:19
叶夢 衣緒。/海月様の猫
少し投稿頻度落ちてます。
2023年
2月27日start
3月3日初投稿