もう一度会えるのならば
要らない、要らない、要らない。……そう思って居た。居た、筈なのに。
「……離して」
雑音混じりに声が反芻する声。声の正体は幼馴染である。その声は雑音混じりに反芻しては泡沫のように消えゆく。消えゆく声を、音を聞きながら。か細く、言う。
「……離れないから、離して」
嫌な感覚。温もり何て知らない。見えない。生温い関係は嫌いではないが、好きでもない。唯、一つ。言える事があるとするのならば。『分からない』と言う事だけだ。
「……本当。だから離して」
離して。
『離さないで』
その日は雨が降っていた。分からなかった。何故、震えているのか。分からなかった。何故、嗚咽が漏れていたのか。分からなかった。何故、応えてくれなかったのか。分からなかった。
否、分かりたくなかったのかも知れない。受け入れたくなかった。受け入れてしまえば心が堪えられず、壊れてしまう事を知っていたから。だから受け入れずに来てしまった。なのに、おかしいと思った。常識を逸脱している。確かに私はそう思った。そう、私は受け入れずに来てしまったのに。いつの間にか『貴女』は私の心に寄り添ってくれていた。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2022/7/13 14:58
最終編集日時: 2022/7/14 9:08
井上雛
暖かくて儚い、そんな話を紡ぎたい。
閲覧してくれてありがとうございます。
『貴方』に届きますように。
開始 7月13日 2022年。
もう一度会えるのならば。連載中。