メモリ不足

コストパフォーマンスと原価。この関係性は現代社会において非常に重視される傾向にある。人はより安く、多くをモットーに商品を吟味するのが当たり前となりつつあるのだ。無論、人生において使える金額の容量は決まっている。故に、それは間違いではないだろう。だが、では何故そんな社会の中で、そのコストパフォーマンスを欠いた商品は消え去らないのだろうか。 −またこんな時間になってしまった。 時間帯はとうに夜の区分に突入し、街灯が自らの役目を生き生きと全うしている。その光に照らされた男の顔は青白く、どこか寂れたような印象を与える容貌である。 −腹、減ったな。 決して素早い動きでは無いものの、その男の最大限を足に乗せ、歩みを進めていく。向かう先は、いつも決まっている。多くの窓から明かりが消える中、いつも夜闇を照らしてくれる小さな星。都市という銀河に住まう光。そう、コンビニだ。 自動ドアが道を開け、聞き慣れたファンファーレを耳にすると、赤の絨毯に導かれるかのように、毎日同じコーナーへと進んで行く。開放的な冷蔵システムは何よりも魅力的な展示台であり、宝石のように輝くポリプロピレンの梱包達に挨拶を交わすと、一つ一つに目を配る。 −今日は、これだな。 短くも長いショーを楽しみ、決めた一つを手に取ると、手早く会計をする。五百いくらかの弁当を手に下げ、街灯の中へと進んで行く。歩む男の姿から、やけに彩が抜け落ちて見えるのは、街灯の明かりがそのように錯覚させるのだろうか。 オートロックのマンションの中を手早く駆け上がり、部屋番号を確認し、与えられた空間の中へと戻る。無造作に上着を投げ、腰を下ろす。部屋の中は整然としていた。片付いているというより、大して何も無いと言った方が正しいだろう。あるのは小さな机と、寝具、空のキッチン、電子レンジ、冷蔵庫。そんなところだろうか。
じゃらねっこ
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ねこじゃらしが好きなので、じゃらねっこです。 毎日投稿始めます。