藍、愛、哀
だれもいない。誰も、いない。黄昏時の夕陽に染め上げられた屋上には、だれもいない。なにも、いない。
ただ、人間でも妖怪でも幽霊でもない、中途半端な搾りかすが立っているだけ。実体はない、さりとて触れないわけでもない。矛盾点でしか構成されないような、そんな存在。
その「存在」は虚空に向かって語りかけた。逆光で表情は伺えず、ただ声にならない透明な声がぽつりぽつりと床に落ちるだけ。
もうその「存在」は消えている。死んでいる。消失、したのである。だが揺れる影が足元に見えたのは陽炎か?見てはいけないものを見てしまっている僕は罪人か?
「雨宮…………」
といてはいけない存在に、語りかける。そっと、手を伸ばす。尚も「存在」は語り続ける。
「…………お前は、ずっとここにいたのか?」
僕はまた語りかける。風がふき、皺だらけで「存在」とは歳の離れた中年の姿から、中学生の見た目になる。
「存在」と似た見た目になる。尚も「存在」は語り続けている。僕に、話しかけ続けている。
頭の中を閃光が何度も駆け抜ける。粗悪な雑音が邪魔をするが、僕は忘れない。フラッシュバックが、繰り返す。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2023/4/14 15:54
雪月真冬
雪月真冬と申します。実を言いますと昔pixivによくお邪魔させていただいていた者です。年齢不詳でお願いします。男子です。フォローしてくれたら嬉しいです。是非フォローしてください!
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