喪失の果てに

 私が小学生の頃に家族が亡くなった。共に暮らしていた祖父母が亡くなった。両親はそれよりさらに幼い頃に交通事故で亡くなった。また、生まれることはなかったが兄もいたらしい。  祖父母とはとても仲が良かったため私は涙を流して悲しんだ。しかも、亡くなった要因が殺人鬼によるものであったことも、私を深く悲しませた。正しくは殺人鬼ではないが。  その犯人は、いや、犯人たちは二十代にも満たない不良少年たちであった。なんでも数十万円を稼ぐために怪しいアルバイトを重ねていた青少年たちであったらしい。そんなことを重ねていくうちに、詳しいことは分からないが、自分達が脅される立場となり実行せざるを得なかったらしい。  そんなことで私の大好きなおじいちゃんとおばあちゃんは亡くなった。家に侵入したとき、飼っていた秋田犬のシバが懸命に吠えてくれたおかげで、少年たちが逃走する前に逮捕することができた。私は当時友人の家でお泊まり会をしており、祖父母の惨状を知る由もなかった。  それ以来私は親戚の家に預けられた。親戚のおばさんは一人暮らしをしており、私とシバを快く迎え入れてくれた。 「どうしてシバっていうのかしら」  おばさんに預けられることとなった初日にした会話である。 「私が小さい時に柴犬だと思ってたから。シバにしよってお母さんに言ったら秋田犬だよって。でもお父さんがそれを気に入ってシバになったの」  私はおばさんに嫌われちゃダメだと思い、まだ事件の名残が心中を支配しているのを無視して、明るく答えた。最もおばさんには哀しそうに見えただろうが。 「あらぁ。それは面白いわね。何よりシバって呼びやすいのがいいわ」
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色々書いています。