来訪者
カフェオレ戦争が始まる二週間前のこと。僕と、その飼い犬であるハニーパルは、ある雪国の田舎町に住んでいた。冬になると毎度の如く不便を被ったが、それ以外は割と良かった。日差しが窓から入ってくるし、無駄な物を削ぎ落としただけあって家賃もすこぶる安い。
僕とハニーは、喜んでそこを根城とした。
それでも、不便には分類されない不思議な要素があった。
この家にはなんと、屋根裏部屋に幽霊がいるのだ。
こんな時こそ警備員の役割なのだが、奴は不敵な笑みを浮かべて尻尾を振り続けている。介入は避けるように、僕の浮遊式ベッドを占領しては眠りこけている。人に関連した物は人間の管轄であり、それ以外こそ己の管轄だとするのが彼の信条であって、今回もその例に漏れず手出しを避けている。
毎夜の如くかたかたと音が聞こえてくる。薄気味悪いとは思わないが、だといっても原因を知れないのはいただけない。
そうしなければ、僕のベッドは返ってこないだろう。
進展があったのは数日経った夜のことだった。
ハニーがアップル・ミルクをぴちゃぴちゃとやり出した時のことだ。刻んだ林檎の果肉を低脂肪分のミルクに混ぜた、彼が好む御馳走である。
茶色の尻尾をフランス軍のサーベルみたく振っている彼の後ろ姿に、純白の何かが重なったのだ。
0
閲覧数: 100
文字数: 1303
カテゴリー: SF
投稿日時: 2025/6/16 8:54
最終編集日時: 2025/6/16 11:12
ot