夏を教えて
春の風が吹き込む三階の教室。一番後ろの一つだけ列からはみ出した席を見つけた僕はその一つ前の机に腰掛け、机の上の花束と卒業生の花飾りを見つめる。少し開いた近くの窓からは今日で卒業する三年生の声と雲ひとつない青空が見えた。
そう言えば先輩と初めて会った日もこんな青空だった。
一年前の夏、僕は鍵の壊れた屋上に入り、フェンスに手をかけていた。どこまでも続く鮮やかな空の青とうるさいほどに響く蝉の声は僕の五感に突き刺さる。もうこんな吸い込まれそうな夏の日も二度と訪れないと思っていたのに、
『そこの君、何してんの?』
そこに居たのは一つ上の三年の先輩だった。こんな僕でも知っているくらい有名な人。生徒会に所属し、クラスではもちろん学級委員長。なんかの部活でキャプテンを務め、県大会一位にまで連れていった人らしい。そのどれもが全校集会で知ったことで、僕からすれば先輩はステージの上の人だった。言わずと知れた人気者。そんな人がどうして、
『もしかして飛び降りようとかじゃないよね?』
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文字数: 946
カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2024/7/26 11:20
最終編集日時: 2024/7/29 15:55
いくら
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