彼の隣で、息をしている

あの頃の私は、先のことを考えないようにして生きていた。 未来を思い描かなければ、失望もせずに済むと思っていたからだ。 朝が来ることに理由はなく、夜が明けることにも意味はなかった。 ただ日々をやり過ごしながら、心だけがどこにも辿り着けないまま立ち止まっていた。 今振り返るとあれは「生きている」というより「終わらせないでいるだけ」の時間だったのだと思う。 そんな私は美容室の椅子に座ったあの日、人生が変わるなんて思ってもいなかった。 いつか振り返る日のために私は今、この瞬間を書き留めようとしている。 第一章 出会い
うかこ
痛みを抱える人へ言葉を綴っています。 ひとりで泣いている夜に、届きますように。