第8回N-1 「運命」

冬の電車にいると、やけに乾いた暖房の風と 人々の厚いコートのせいで、いやに火照ってしまって、 夕立を残した雲の下、風邪を引いたような気分になる。 ふと窓の遠くを見ると、住宅地のその奥に霞んで青く光る 名前も知らぬ峰々が赤く鮮やかな夕日に侵されかけている。  私は今、ありきたりな感傷に浸っている。 断られた、彼への告白。 理由までありきたりで、「他に好きなひとがいるから」 別に、悲しいとか、胸が苦しいとかいうのはない。 なぜなら、そういうのは好意を告げる直前に
後川
後川
遅筆です。フォローしてくださる方 本当にありがとうございます。 第七回N−1 12位  435点 第八回N-1 9位  318点