あの日の話

朝六時、父の目覚ましが鳴る。 止める音が乱暴で、それで目が覚める。僕の部屋には時計がないから、父さんの機嫌で時間を知る。 キッチンから音がする。 母さんはいつも無言で朝ごはんを作る。 僕はゆっくり起き上がる。 少し早い鼓動を気のせいだと落ち着ける。 「いつまで寝てるの」 扉の向こうから声が飛ぶ。 「ごめんなさい」 そう答えると、静かにため息をつかれる。何が正解かなんてわからない。
叶夢 衣緒。/海月様の猫
叶夢 衣緒。/海月様の猫
綺麗事が救いにならない夜の話。 正しさに置いていかれた感情と、 救われなかった青春の残骸。 優しい言葉ほど、いちばん痛い。 2023年 2月27日start 3月3日初投稿