追いかけた先で

駅前のカフェの窓際。私はイヤホンを耳に差し込み、小さな画面に映る彼を見つめていた。 今日もきらめく照明の下で、ステージを駆け回る推しの姿。会ったことなんて一度もないのに、彼の笑顔はまるで私だけに向けられたものみたいに胸を温める。 つらいことがあった日も、友達とケンカをした日も、彼の歌声と笑顔に救われてきた。 「推しは推しでしかない」なんて冷めたことを言う人もいるけど、私にとっては違う。 彼がいたから、私は今まで頑張ってこれた。 何回も応募して、やっと当たったライブの日。遠く離れた席でも、光の海に揺れるペンライトの中で、確かに彼と同じ空気を吸っていた。 一瞬だけ、視線が交わったような気がして――熱が胸に広がる。
ねこわさび
ねこわさび
気まぐれ投稿。