寿楽荘、曰く憑きにつき〈6〉

寿楽荘、曰く憑きにつき〈6〉
「——————⁉︎」  柳田は視界に飛び込んで来たそれを見て絶句した。  中から出て来たのは————男の生首だった。  苦悶の表情を浮かべたまま固まっている。死後、どれだけ時間が経過しているのか、腐敗が進み肌は黒く変色している。表面の皮膚は乾燥が進み痛々しく罅割れていた。切断された首元や顔面に存在する孔からは血液ではなく腐敗汁が溢れていて、そこに大量の蛆が蠢いているのが確認出来た。  今まで嗅いでいた臭いの正体はこれだったのだ。 「うぷっっ———おえぇっ‼︎」  更に強まる腐敗臭が呼吸の度に嗅覚を刺激し、柳田は遂に堪え切れず、逆流する胃液と共に胃の中身をその場にぶち撒けると、堰を切ったように何度も何度も胃の中が空になるまで吐き続けた。自身の吐いた吐瀉物が畳の上に広がる。 「ああ〜あ・・・・・・やっちゃいましたねえ。他人様の家で吐くなんて全く躾がなってませんねえ、柳田さんは」 「・・・な、なな何だよこれ⁉︎」  何度も吐き散らかし口許が自身の胃液で汚れる。喉が焼け付くように痛い。散々吐いた後、柳田はその恐怖から逃げ出したい一心でとにかく無我夢中になってのたうち回った。
華月雪兎-Yuto Hanatsuki-
華月雪兎-Yuto Hanatsuki-
皆様初めまして。華月雪兎です🐇 「雪」に「兎」と書いて「ゆと」と申します💡 現在は掌編、SS、短編から中編サイズの小説を書かせて頂いております。 恋愛系短編集 『恋愛模様』 ミステリ/ホラー系短編集 『怪奇蒐集録』 をエブリスタ、Noveleeにて不定期連載中📖🖊