もう一度③
ただの気まぐれだった。宛もなくさまよい続けるうちに時間は進んで行った。そんな中見つけた俺と同じ“化け物”は俺よりも人間味があった。ちゃんとした“人間”だった。
歩き続けた先で訪れた村はとても貧相だった。ボロボロな木材をただ立たせただけのようにも見える家がポツポツと建ち、人の気配が酷く感じない場所だった。
それでも時折聞こえる子供の声に近づいた。
目標なんてない。ただ歩いて、歩いて、歩くだけ。なんのためだったかなんてもう忘れてしまった。そもそも歩き続けることに意味なんてあっただろうか。ただ人と同じでありたいと思った。人は歩こうとするからそれを真似た。そうしたら自分も変われるのだろうかと期待した。結局歩いても意味は無いことに気づくと自分の存在意思がなくなってしまう気がして、宛もなく歩き続けたんじゃないか。そう思う気もする。
結局、自分がなんのために歩いているか知るつもりもなかった。その村に踏み入ったのもただの気休めだった。
人は気配に敏感だった。だから俺が人間ではないことをすぐに見抜き、恐れてはまた暴力の繰り返し。慣れてしまった日常の中で見えた地面は、冷たくて硬かった。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2023/3/7 12:34
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
未尋
時々、というかほぼ投稿しない時の方が多いけど、パッとした時に思いつきで投稿します!