短編「風の向こうの影」

短編「風の向こうの影」
梅雨明けの昼下がり、蝉の声が耳を塞ぎたくなるほど降り注ぐ頃、私は家の前に停まった軽トラックを見送った。宅配便の運転手が置いていったのは、小さな段ボール箱。  差出人の欄には、おばあちゃんの名前がある。  封を切ると、涼しげな水色のハンディファンが現れた。  「熱中症に気をつけなさい」と手紙には丸い字で書かれている。私は笑って、机のUSBケーブルにつなぎ、スイッチを入れた。 ふ、と視界が揺れた気がした。  生ぬるい風が頬を撫でる。窓の外、庭の柿の木の根元に、誰かが立っている。  麦わら帽子を深くかぶった小柄な人影。けれど、帽子の下は影になっていて、顔は見えない。
虹色のシャボン玉
虹色のシャボン玉
適当に楽しくやってます!! 作品のサムネは全てAI生成によるものです