嘘と夏祭りと恋

嘘と夏祭りと恋
 初夏の夏の昼下がり。滴り落ちる汗を襟で拭いながら、僕は走っていた。いつもと違うこの町の空気に、心臓が落ち着いてくれない。  どれくらい走っただろうか。疲れた僕は、呼吸を整えながら自販機の前に立っていると 「おーい、涼介!もちろん行くよね。夏祭り。」  目の前にある広い庭のある家の2階から顔だけ出して僕を呼んだ。 「当たり前だろ!かなえこそ遅れんなよ!」  そう、今日は夏祭りの日だ。見渡す限りの山にセミの声。お店は曲がった婆ちゃんがやっているタナカ商店くらい。  そんなド田舎の僕らの町が唯一盛り上がり、活気づく今日。僕は決心してきた。  タナカ商店でキンキンに冷えたジュースを飲みながら、祭りが始まるのを待っていた。  かなえとの待ち合わせの時間まであと1時間もある。何もしなくても滲む汗に、いつもなら嫌気がさすのだが、今日くらいは良いだろう。
ぽんこ
ぽんこ
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