彼岸花が似合う君へ
霧の濃い川にいた。僕はそこで船に乗っている。ふと、霧のなかに動く影があり目を凝らしてみると女性だと気づいた。その頭に花のアクセサリーを付けた女性は陽気に歩いていたが、こちらに気づいたとたん驚いたのち、大声を出して叫んでいた。
目が覚めると知らない天井が目に飛び込んできた。あたりを見渡すとここが病院であることがわかる。近くにいた看護師に聞いてみると僕は交通事故にあったらしい。不幸中の幸いというべきかそこまでの重症ではなく、一週間ほどで退院することができるそう。僕は、リハビリするとしよう。
数日後、実際に退院することができたので、家に帰ることになった。鍵を開け、扉を開ける。そして、中に入り荷物を置こうかとリビングに入った時、机の上に身に覚えのない赤い何かがあることに気づいた。また、それが彼岸花であることに気が付くのに時間はかからなかった。僕は一人暮らしなので、家に誰かが入ってくることは基本ない。さらに言えば、家の中が荒らされた様子もなければ取られたものもないときた。実害があるわけでもなさそうだし、もしかしたら、事故の衝撃で忘れているだけかもしれないので、気にしないこととした。
赤の彼岸花の日から三週間くらい経っただろうか。朝起きるとまた、彼岸花がおかれていた。前回は赤色だったのに対し、今回はくすんだような白。やっぱり、玄関の鍵はかかっているし部屋に人が入った形跡もない。そこにただ、白い彼岸花があるだけ。その花を不審に思いながらも片付けようとしたとき、あの夢のことを思い出した。そう、病院の時に見た霧の夢。僕にはある一つの可能性が浮かぶ。いや、限りなくありえないことなんてわかってる。僕は慌ててスマホを取り出し検索欄を開く。・彼岸花 花言葉・検索結果はすぐ下にでる。彼岸花は、色によって花言葉が違うらしい。赤色の彼岸花は「悲しみ、悲願」白い彼岸花は、「また会える日を楽しみに」僕は家を飛び出して走っていた。ほんとにそうかはわからない。けど、三年前に僕の元を去っていった彼女としか思えなかった。彼女は花が好きで、何かあると想い花にのせて送ってくるような人だった。そして、彼女は落ち込むと必ず近くの海にいた。
「やっと来た?遅いよ」
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2023/10/16 14:36
ららのーと
大学1年。初小説2022年9月21日
暗めの話が多い人。