二人だけの世界

あるボロアパートの部屋にマットという若い男が住んでいた。 狭い木造建築の一室に、何枚もの絵が散りばめられている。 マットは老人のように背中を丸めながらひたすら絵を描いていた。 ずっと幼い頃から画家になることを夢見ていたが、一向に売れる気配すらない。いや、売る相手すらいない。 そもそも人付き合いが極端に苦手で恐怖を抱く男にどこへ行き、どこへ自分の作品を発表すればいいのかすらわからない。 昼は清掃の仕事をし、帰って来たら絵を描くというルーティンだ。 誰にも見せない作品を描き続けて筆を折らないかと誰もが思いが、ただ一人絵を見てくれる人がいた。 緑色の瞳の猫のスーだ。 スーという名前はマットがつけた。
ナマコ
ナマコ
初めて小説を書きます。 読んでいただいたら大変嬉しいです☺️