呪いの鏡にソプラノを一滴

 しっかりと整えられた天蓋つきのベッドの裏側。  隠していた手鏡を取り出したあと、柔らかな羽毛に包まれた。 「残されたのはこれだけになってしまったわ……」  手鏡を見ながらひとりごちる。  6年前に病死した双子の妹であるリリーが大切にしていた手鏡だ。  ゆっくりと時間をかけながら、リリーの存在が屋敷から消されていく。  この手鏡もいつかは誰かの目に留まり、処分される運命だ。  無駄だとは理解している。
木のうろ野すゞめ
木のうろ野すゞめ
雰囲気小説を書く人です。 毎週金〜日曜日の間になにかしら書きあげていきたいです。 現在は主に「書く習慣」にて生息しております。 2025/8/16〜