ひび割れた闇

ひび割れた闇
 放課後、誰もいなくなった教室で、椅子に座った細身で背の高い少年の前に、もう一人の少し小柄な少年が立っていた。背の高い少年はハインリヒ、もう一人はコンラートといった。 「ハインリヒ、君は本当に大丈夫なの?」  コンラートは不安そうに、いつも冷静なハインリヒの顔を見つめていた。最近のハインリヒはどこか様子がおかしかった。学校でも元気がなく、時折遠くを見るような目をしていた。体調が悪そうなときも多いが、それを隠すかのように彼は微笑み、決して本心を明かそうとしない。 「大丈夫さ、何度も言っただろ?」  ハインリヒは少し疲れたような笑みを浮かべて答えたが、その目はどこか遠くを見つめていた。彼の心の中には、誰にも言えない思いが沈殿していた。 「でも……最近、君、少し変だよ。何か隠していることがあるんじゃないか?」  コンラートはおずおずと言った。ハインリヒは少し戸惑った様子を見せたが、すぐにいつもの穏やかな表情に戻った。 「隠していることなんて、何もないさ。君が気にしすぎなんだよ、コンラート」 そう言って、ハインリヒは机の上に置いた教科書を閉じ、鞄にしまった。しかし、その動作もどこかぎこちなく、疲れ果てているようだった。
おぐりん
おぐりん
初めまして。 性格:INFJ-t型、 HSP 、軽く病んでます。 ぼちぼち投稿していきたいです。