第一回ノベリ川賞『チシカ』
山々、深き霧に覆われて。
これ一切の貌を見ず。
我よ目凝らせども。
見えぬて額、打ちにけり。
やうやう、白き裾は広がりていたり。
女、息を吸うこと十数えたころのことである。この徒労に終わる呼吸とやらについて深く考えこんだ。当然のことながら、考える間も、また数というのは数えているのである。十と一つ、二つ。三つのときに一度、意識ひとつで止められる生命活動をやめ、ほんの少し経てば、また四つを数え始めた。
「息を止めては苦しいか。なるほど、あの人はわざと息を止め、咳をしたのではなかろう」
ひとつ頷いたと思えば、数を数えるのをやめた。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/6/18 14:13
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
Us
Us「うず」です。よろしく。
「よよ」だったものです。
高一
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