終わらない夢

俺は最近、夢の中の出来事を自分が思ったとうりの結末にすることができる。いわゆる明晰夢というやつだ。飛ぼうと思えばスーパーマンのように飛ぶこともできるし、俺が片思い中の女の子を両思いにだってできる。そんな夢の中は夏休みの宿題に追われる現実なんかよりずっと楽しいし一生夢の中で暮らしたいと思うほどだ。 昨日はテロリストに襲われる女の子を助ける夢を見た。自分で分かるほどに厨二病っぽい夢だが、まぁこの年頃の男子はみんなそんなものだろう。それに、ただの妄想ではなく夢の中の出来事だ。思い浮かべるだけではなく、実際に夢の中で俺はテロリストを倒したし女の子からイイお礼だってもらった。しかし明晰夢も所詮だだの夢であってレム睡眠の時にしか見ることができないというのも普通の夢とは変わらず、中途半端なところで終わることだってある。そこで俺はそろそろノンレム睡眠に切り替わるだろうというタイミングでフィナーレを迎えてきっちりと夢を終わらせる。明晰夢を見ることができる人でもここまでしている人はなかなかいないだろう。 今日も体調を整えて明晰夢を見る準備をする。俺の場合だけなのかもしれないが、寝る前には明るい光を絶対見てはいけない。スマホの明るさを最小にしてもそれだけで明晰夢を見ることができなくなってしまう。そのため自分の部屋へ行く階段を登る時にも電気は付けない。そしてもう一つの条件は時間だ。必ず決まった時間にベッドへ入る必要がある。今日は少し時間がギリギリだ。なんとか間に合わせるために妹の本で散らかった階段を急いで登る。 どうやら間に合ったみたいだ。今日は最近流行っているアニメの主人公をそのまま自分に置き換えた夢を見る。そしていつも通りのように夢の時間が終わるまでに話を完結させる。だがしかし、なぜか今日は明らかにノンレム睡眠へと切り替わる時間を過ぎても夢が終わらない。もしや俺は寝ている間ずっと夢を見ることができるようになったのか⁉︎ こんなことが起こるなんて最高すぎる。次は潜在能力が開花して強盗団を捕まえる夢にでもするか。そうして俺は終わらない夢の時間を楽しんだ。永遠に終わらない夢を。現実では妹が階段に本を置いたことを後悔して俺に向かって泣いている。
エーテル (短編・SS)
エーテル (短編・SS)
SF・異世界・非日常などちょっと独特な感じのショートショートをメインで書きます。 (全然別ジャンルも書くかも) いいね・コメント・フォロー気軽にしてください〜