道化師(ぴえろ)

わたくしは、何処の誰か。 そう問われましても、白で塗り固められた面にかしこまったスーツ。 不自然に釣り上がる真紅の口角。無造作に整えられた髪。 これらを見れば十分でございましょう。 貴女の目に反射するわたくしは、何処からどう見ても、道化師そのものではございませんか。 嗚呼、名前。名前でしたか。 ええと、わたくしの名前は。 はて、わたくしに名など存在していたのでしょうか。 さっきの路地裏に落としてきてしまったのかしら。 交番まで走らないといけないですね。
一ノ瀬奏
一ノ瀬奏
いちのせ かなで(Ichinose Kanade)と申します。 創作の源泉は教室に響く乾いたチョークの音とどこか遠くから聞こえる先生の声。 そんな贅沢なBGMを拵えて、本来「有意義」と言われるべきだった時間に「無意味」をつらりと重ねること、それが私にとって何よりの至福でございます。 私の奏でる不協和音が退屈極まりない日常に、「ふっ」と鼻を鳴らして笑ってしまう、どこか間の抜けていて、でも確かにそこにある「ズレ」をお届けできれば幸いです。 もっとも、私の旋律が顔も名前も知らない貴方のお耳に馴染むかどうかは保証致しかねますが。