神様の花嫁1

神様の花嫁1
少しずつ涼しくなってきた今日この頃。きれいな月を見ることもなく、アスファルトの地面とにらめっこしながら足早に帰る。 相澤、と書かれた表札。いつの間にか、目の前に家が立ち塞がっていた。 「…ただいまー。」 形だけの挨拶をした。もちろん、答えてくれる人はいない。 ワハハ、とテレビの音が聞こえる。私は息を殺して、ゆっくりと扉を開けた。 誰とも目が合わない。父も母も会話に夢中でこちらに気がつかない。 「あら、帰ってたの、明美。」 母がようやく気がついた。ただいまくらい言いなさいよ、と刺々しい言葉を投げつけてくる。 「面接、どうだったの?」 大学4年生になってからというもの、面接がある日は必ずそう聞いてくるようになった。
かづき
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