甘いプリン

甘いプリン
久しぶりに立ち寄った喫茶店は、少しだけ古びていた。 それでも、カウンターの奥から漂うコーヒーの香りは、あの頃と変わらない。 高校の帰り、いつも彼女と並んで座っていた。 彼女は甘いものが大好きで、特にこの店のプリンがお気に入りだった。 僕は甘いものが苦手だったけれど、彼女が「一口食べてみて」と差し出すスプーンを断れず、 少しだけ舌を慣らしたものだった。 「ねえ、見て。カラメルがハートになってる」 彼女はそう言って笑いながら、スプーンの先で僕の手の甲を軽く突いた。
寸志
寸志
はじめまして 恋愛小説を書くことが多いです。