半世紀前の宿題と邂逅。

邂逅とは高校時代のサークル仲間(ハンドボールって球技)が久しぶりに新宿に集って呑み会をしたこと。当時は創部したばかりで(まぁ学校自体が創立したばかりだったのだが)下手くそで弱小チームだったクセに話が途切れることなく、爆笑とか消息とか真相とかシンミリとかで、楽しくも有意義な一時を過ごせた。時の隔たりが消え去ったかのような一時。 宿題に移ろう。ハンドボールを追いかけて、ロードワークに明け暮れていた頃、国語の先生の勧めで歌舞伎にも興味を抱き始めていた。観劇と共に、取り敢えず歌舞伎雑誌「演劇界」を定期購読して、いつの間にか「舐めるように」読み耽るようになっていた。それと共に演劇博物館の存在を知った。誌上の劇評、評論の執筆者は気のせいか早稲田の先生が多いし、なんといっても日本の演劇研究の中心であるらしい演劇博物館は、行きたい所、行くべき所から行かなくてはならない所にランクアップしていったのは自然な流れだった気がする。 時は移り二〇二五年四月某日、首都圏地方都市から東京に向かう車中、老人はスマートフォンと格闘していた。得物は地図アプリと乗換えアプリと早稲田のホームページ、目指すは早稲田大学・演劇博物館である。夜の会合場所が新宿であったので、コレを機会に宿願を果たそうと思い立ったのであった。 「少年老いやすく学なりがたし」を実体験してしまった愚かな老人だとしても、期待感が非日常感覚に誘ってくれているのがわかった。若干の興奮状態。 早稲田の街並みは大きなビルが少なく、学生街っぽくて親しみを覚えた。ここの探検部出身の高野秀行の著作を思い出した。 目指す演劇博物館を確認するとしばし黙考して喫煙所を探して、最高の一服を喫する(まさか、学内には有りませんとか馬鹿なことはあるまいとは思っていたが、若干の不安はあった、自分の出た大学で言われた時は悲しかった、喫煙所アプリは正確であった)。 坪内センセの銅像に心の中で挨拶しながら(本当にすると、如何にもで、変な人と思われるから)中に入る。 図書室に入ると、すぐに「キネマ旬報」のバックナンバー(全部だろう)、演芸画報、あと題名だけ知ってる辞書、名著の数々。写真は禁止なのでコインロッカーに預ける。一通り眺めて、記念品が欲しかったので、「初めて買った演劇界」の表紙だけでもコピーしようと探し出してコピーを取る。 別の部屋では映画を上映していて、「人間の条件」をしばらく眺める。
ヨーイチ