或る空間的なエクスタシーへの過程 5
「さあ、つづいて、今日はハロウィンということで渋谷の様子を見てみましょう」
ニュースキャスターの高島がそう言うと、高島の横に据えられた画面に上からの画角で映る渋谷が表示された。往来は人で満たされ、その熱狂が画面越しからでも伝わるようだ。
「いやぁー、やっぱりハロウィンの渋谷は毎年すごいですねぇ。皆川さんは渋谷のハロウィン行かれたことあります?」高島が出演者の高学歴アイドルに話題を振った。
「過去に一度だけ行ったんですけど、もうほんとに、これを見てもらえば分かる通りすごい人で。そのときは友達と行ったんですよ。でも、もう来年からは家で集まろっか、てことで」皆川はアイドルという職業からか、大きく身振り手振りを交えて喋った。
「あらそうですか。ほんとにすごい人だよね。皆川さんと同じ感想を抱いてる人がたくさんいるんじゃないかな。なのに毎年この人数だから。一体どこからこんなに人が集まるんだろう。四島さんはどうでしょう、渋谷のハロウィン」高島は次に精神科医でタレントの男に質問した。
「いやぁ、僕は元来こういった催しが苦手でしてねぇ。うん。否定してる訳じゃないんだけど、僕にはこんな元気というか、若さというべきか、持ってないですからね」四島は首を傾けながら喋る癖があった。
「僕も持ってないですよ、こんな元気。若者の皆さんには、若さを存分に使っていただきたいですね」
高島が次のコーナーへ進行させようとまとめの感想を口にした時、画面に映し出されたスクランブル交差点の映像が俄かに変化した。人々が或る地点から離れていく
「あれ、なんでしょう。急に皆さん動き出して。青い制服、ええと、警察の方たちでしょうか、その人たちを抑え込んでいる集団が、ええと、どうなってるんだ、これ」
スタジオの全員が困惑していると突然に画面が切り替わった。カメラの横でカンペが出された。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2024/10/22 8:34
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
山口夏人(やまぐちなつひと)
好きな作品
「K君の昇天」梶井基次郎
「中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃」三島由紀夫
「狐媚記」澁澤龍彦
「阿修羅花伝」赤江瀑
「芽むしり仔撃ち」大江健三郎
「ぬばたまの」須永朝彦
「火星植物園」中井英夫
「半島を出よ」村上龍
「トビアス」山尾悠子
「獣の奏者」上橋菜穂子
「有頂天家族」森見登美彦
「宝石の国」市川春子
2005年6月11日生
ある文学賞に応募したけど、箸にも棒にもかからなかった作品を挙げてます。