バスでの話

バスの車内は程よく冷え、ワイシャツに滴る汗を少しずつ乾かす。背中の湿ったシャツが、座席のシートにくっつく。医大前を通り過ぎると、人はまばらになる。男はスマホの多肉植物を見て微笑む。バスはしばらく進み、駄菓子屋の横を通り抜け、海へ出る。海の上を走りながら、バスは進む。船が横を通って、船長が帽を振る。一匹の魚が跳ねた。 「魚!」 一人の老人がそう言って立ち上がった。それを見た乗客は顔を見合わせる。 「魚!!」 みんなが一斉に立ち上がる。男は無視をしながら、スマホを見つめる。しばらくすると乗客は何事もなかったかのように腰掛け、またスマホを眺める。 カーブミラーはバスを映し、家を歪ませる。 「降ります」 一人の少年がそう言った。 「820円です」 2枚のコインしか持たない彼は、また席に座る。
センヒキ
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