液晶を挟まずに

液晶を挟まずに
「私は研究者だ。それも天才と言われるタイプの。25才にして既にジジイとババアで構成された研究室で活動を共にしていたくらいにはすごいの。」 ギギギ…と嫌な音を立てて鉄の扉である天井が開き、そして錆びついた脆さ故に自重で崩れ落ちる。煙が収まった頃、またぼそりと独り言を呟く。 「だから、そんな私が驚いているという事はとても凄い事態なの、これは。」  私は研究者だ。昨日はたまたま採取が必要だった昆虫の羽を採取する為、地上へ降りて作業をしていたのだ。しかし、そこで緊急アラームが鳴った為地下シェルターに避難。その扉が腐り落ちて開き今に至るという訳だ。 「にしても、こんな事になるなら空中要塞にいたままにしとけば…いや、恐らく上に居たら地に堕ちて終わりか…。」 周りを見渡すと、壁やら天井やらが腐食している。まるで何かの菌に汚染されて居るかのように。手元の翻訳機も煙を上げるだけで正常に動作しない。 「多分、バイオ科の誰かがやったんだろうか。…はぁ。」 今まで人生を掛けて描いて来た物、創った物がただの鉄屑に…いや、それ以外の塵と化して仕舞う瞬間を見て、ただただ悲壮感に覆われる。ここで悲しみながら俯いて居ても仕方が無い。心当たりも無い何かを探す為、或いはただ気を紛らわせる為かもしれない。とにかく、私は当てもなくその草原を歩き進める。
しらたき
しらたき
しらたきです。普段は鍋の具としてぐつぐつ煮られています。ほどほどによろしくお願いします。