飛ぶ
幼いときに読んだライト兄弟の伝記が強く印象に残っている。漫画の中のライト兄弟は不可能に挑戦するスーパーヒーローだった。ライト兄弟に憧れ、いつの日か空を飛びたいと思うようになった。
暑い八月の昼頃、窓から見える飛行機雲を見て、改めて空を飛びたいと感じた。
「たかし、ごめんね。ちょっと仕事が長引いちゃって」
母さんが慌てて部屋に入ってくる。
「今日はね、りんごを貰ったのよ」
母さんは嬉しそうにそういいながらりんごを取り出し、皿に盛り付けてくれた。
生まれてから今日まで常に病弱で入退院を繰り返す僕を母さんは文句も言わずにサポートしてくれる。それが僕にとって苦痛でもあった。
「ありがとう。僕本の続きが気になっているから今日はお話の相手できないや」
母さんは「でも」と名残惜しそうにしていたが、無理矢理に帰ってもらった。
「そうなの。また来るからね」
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/7/16 8:45
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
K
色々書いています。