星の象

星の象
 星の象と出会った。  象は、いつも荷物を背に夜の間を旅しているのだと語った。 だから、いつしか星の象と呼ばれるようになったのだと。  それから、象はボクにキリマンジャロの山頂で見た溢れそうな星空の風景や、ジャングルの奥の湖で、湖面に映る天の川から水を飲んだ時の話を聞かせてくれた。 「うらやましいな」  ボクは思わず呟いた。 抱えた膝の間に、涙が一つ流れ星の様に落ちる。  けれども、象は「そうでもない」と大きな耳を左右に揺らし、ついさっきボクが飛び出してきたばかりの街を、その長い鼻先で示して言ったんだ。 「ごらん。あのたくさんの灯りを。なんて美しいんだろう。まるで、たくさんの星が集まっているようじゃないか。あの美しさを知っているならば、この中で美しく生きられない人なんて、いないだろうと私には思えるよ」
泥からす
泥からす
短くて、変な小説を書きます。ノンジャンルです。