夜を超えて

夜を超えて
ビルの隙間から吹き抜けていく風が髪をなびかせる。深夜2時。 「ねぇ、ほんとに良かったの?」 『何が?』 「こんな夜遅くに呼び出しちゃって、」 『夜遅くに外出ちゃ行けないような年齢でもないでしょ、俺ら』 そう言いながらバイクのミラー越しに私を見る。 「そうだけど、」 たまに、たまに眠れない夜が来る。そんな時は大抵、具体的でない、抽象的な、形を持たない“なにか”が私を襲う。“なにか”が怖くて、眠れなくて、私は夜から逃げたかった。 『俺に連絡くれたんでしょ?』 そんな夜から救い出してくれた感謝も伝えられず、ただ彼の腰周りの服をぎゅっと握る。
いくら
いくら
投稿始めました。 感想など頂けますと励みになります。