名のない世界で
“生きていることが辛い”、“私は生きている価値がない人間です”と、友人が住んでいるボロアパートのテーブルの上のレター用紙に描いてあった。咄嗟に私は友人の気持ちを思うことより先に、これ、私があげたやつだ、と思ってしまった。それから、これ何?と台所にいる友人に悠長に聞いてしまった。その上、なんとも思わない私が今度は怖くなって私は身震いを始めた。脳をこんなにはやく回転させるとさすがのアインシュタインでも追いつけないだろう。あぁ、駄目だ。思考が動かなくなってしまった。なんで私はこんなにもマイナス思考なのだろう。
『今更、なにを言っている』
“私の中のもの“が冷静に答える。今考えてみれば友人が私のあげたレター用紙にこのようなことを書いたのも私のマイナス思考がうつったからなのかもしれない。それなら、本当に償いのし難いことをしてしまった。
「そんなことないよ。」
え? 私は突然の声につい驚いてしまった。
「アタシがこんなこと書いたのは君のせいじゃないよ。それに人は皆マイナス思考を何処かで必ず飼っているものだよ。」
「そ、そうだね。」 私はわたしの悩みをまるめられたみたいで動揺した。しかし、それを背に友人は続ける。
「私ね、今の自分に満足できなくなっちゃって、もういいかなって。小さいときから“この能力”のせいでいつも,周りから避けられていたし。だから、せめて最後にでもわたしのことを理解してくれそうなあなたも呼んだの。こんなわたしを受け止めてくれて本当にありがとうございます。」
「いやいや、とんでもない。こちらこそ有難う。」
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2024/2/11 15:23
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